インカムゲイン投資 パート1 〜債券について〜

投資を続けて、継続してリターンを出せれば、ある程度の金額に到達することが出来ます。

そして投資で利益を得るためには2種類の方法があります。

1つ目は売買の差を利用して利益をだす方法です。例えばA社の株を安く買って高く売るという、商売の原則に基づいたものです。

2つ目はお金を貸したり預けることで、利益を得る方法です。例えばA社にお金を貸して何年後かに元本を返してもらう契約をし、その代わりに年率何%の利息を得るなどです。

 

2つ目の方法である、キャピタルゲインではなくインカムゲインに着目し、資産を守りながら安定的にキャッシュフローを得られるようになれば、経済的自由を達成することができるでしょう。

その為には債券投資を理解する必要があります。

イメージとしては富裕層向けのプライベートバンクがおこなっていることを説明していきます。

 

1.債券の仕組み

債券とは、発行体(お金を借りる人のこと)が資金を調達するために発行する有価証券のことです。 一定の期間あらかじめ定められた方法で利息(利子)を払い、一定期間後にあらかじめ定められた方法で元本を支払うことを約束している債務証書のことです。

利息はクーポンと呼ばれ、年率の%で表示され、半年後ごとに年率の半分が支払われることが一般的です。

元本が最終的に返済されることを償還と呼びます。返済される予定日のことを満期日もしくは最終償還日と呼び、支払われる元本のことを償還金と呼びます。

債券は英語では Bond もしくは Fixed-Income Securities と呼ばれます。 仮に発行体が約束を守れなかった場合・・・つまり利息の支払いや元本返済が滞った場合はデフォルト(債務不履行)となります。

 

 

では株式と利息の違いは何でしょうか?

 

 

 

2.債券の種類

債券には様々な種類があります。まず分類しやすいのは発行体の違いによる分類です。

大きく分けて公共債、⺠間債、国外債の 3 つがあります。

 

公共債のうち、国が発行するものは国債、地方自治体が発行するものは地方債、政府関係機関が発行するものは政府機関債と呼ばれます。政府機関債の中で政府保証のつく物が政府保証債、政府保証のつかないものが財投機関債と呼ばれます。

 

⺠間債は一般企業が発行するもので社債と呼ばれます。一般企業が発行すると事業債、電力会社が発行すると電力債、銀行など金融機関が発行すると金融債などがあります。

 

 

国外債は、非居住者債とも呼ばれ、外国の政府や機関、企業が日本国内で発行する債券です。円建ての場合は、円建て外債・・・通称サムライ債と呼ばれ、外貨建ての場合は外貨建て外債・・・通称ショーグン債と呼ばれます。

 

海外で発行される債券はまとめて外債と呼ばれます。外債の中にも国が発行するものや一般企業が発行するものなどがあります。米国国債のことをトレジャリー、イギリス国債のことをギルト、ドイツ国債のことをブンズと呼びます。

 

ここまでは発行体による分類でした。他には年限(償還までの年数のこと)別に分類できます。

例えば日本国債の場合、年限が 1 年以下の短期債、年限が 2 年〜5年の中期国債、年限が10 年の⻑期国債、年限が20年〜40年の超⻑期国債などあります。

 

3.債券市場の規模

 

株式と債券ではどちらの市場規模が大きいでしょうか?

世界の株式市場を合計すると7000兆円程度になります。それに対して債券は1京円以上となります。

一般的にはあまりなじみがない債券ですが、市場規模は株式よりもはるかに大きいのです。

 

 

4.利回りと価格の関係

債券が一般的に難しいといわれる点はこの項目です。

 

例えば個人でお金を貸し借りしたとします。100 円を貸し付けて年間 6%の利子を支払ってもらい、1 年後に 100 円を返してもらいました。リターンは 6%となります。

債券の場合は返ってくる金額を額面と呼びます。難しいのは最初の入り口、つまり購入単価(額面 100 円あたりいくらかで表示される)は100 円とは限らないということです。

この点について説明します。

 

債券投資では「99 円貸し付けて、年間 6%の利子を払って、1 年後に 100 円を返してもらう」というケースが起こりえます。

額面は変化しないのですが、購入単価は投資のタイミングによって変わり、それが利回りに影響します。

上記の例ですと、利息収入 6 円と償還差益である 1円(100-99)の合計となる 7 円がリターンになります。

投資元本は 100 円ではなく 99 円ですので、リターンは

7÷99×100=7.0707・・・%

になります。

 

ここからわかることは

価格低下→最終利回り上昇、価格上昇→最終利回り低下

となります。

 

 

ここで持っている債券の値段が上がったら場合、その分利益になっているのだから、利回りは上がるのでは?

と考えた方は鋭いです。

 

では価格上昇の恩恵を受けるにはどうすればいいでしょうか?

最終利回りは償還まで保有した場合の利回りです。一方、所有期間利回りは、償還まで保有せずに途中で売却した場合の利回りです。所有期間利回りは年率換算します。

債券はデフォルトしない限り、投資した瞬間に最終利回りは確定します。しかし、償還までは価格変化=利回り変化はあります。その為、所有期間利回りは一定ではありません。ゴール(最終利回り)だけはあらかじめ想定できる、それが債券投資です。

 

では下記の場合の利回りは何%でしょうか?

 

償還まで残存 10 年、クーポン 2%の債券を単価 99.80 円で購入し、半年後に 100.10 で売却したとします。

この期間の所有期間利回り(年率換算)は何%でしょう。

 

クーポンは年間 2%、価格差益は 100.10-99.80=0.3 だがこれは半年なので年に直すと 6。 リターンは 2+6=8、購入単価は 99.80 なので

 

8÷99.80×100=8.016%(小数点以下 4 桁を切り捨て)

となります。

 

5.デュレーション

デュレーションには 2 つの側面があります。

まずひとつは個々の債券や債券で構成されるポートフォリオの投資した資金の平均回収期間を示すものです。

もうひとつの側面は、金利の変化に対する債券価格の変動率です。デュレーションが⻑いほど、金利変動に対する価格の変動率が大きくなります。

 

例えば今、みなさんが残存3ヶ月、クーポン 2%の債券を持っているとします。3ヶ月後には現金化される予定です。そして極端な想定ですが、利回りが突如跳ね上がり10%になったとします。

 

その場合、利回りが2%よりも 10%もらえたほうが嬉しいので、クーポン2%の債券を売って 10%のものに持ち替えた方がいいでしょう。しかし3ヶ月後には現金化されるのでそれを待ってからでもそこまで機会損失は大きくありません。

その為、この 3ヶ月債はそこまで大きく値下がりしません。

 

しかし、所有している債券が20 年債だったらどうでしょうか?

今から 20 年間毎年2%しかもらえないのは機会損失が大きいです。それだったらこの債券を売って新たな債券を買おうとするのではないでしょうか。

 

 

年限(償還までの期間)が⻑いほど、金利が上昇するとその価格が大きく下がってしまうことが理解できます。

逆に急に利回りが低下した際にはお宝銘柄になる可能性もあります。

 

そこまで踏まえた上で、1年債と 10 年債はどちらの方がリスクは高いでしょうか?

その理由はなんでしょうか?

1年債は持つ期間が短いので、金利変動へ素早く対応できます。その代わり、リターンは限定的です。

それに対して10年債はもともとの金利が高めに設定されて、リターンが大きくなるようになっています。その代わり、金利変動への対応力は弱いのです。

要するに償還までの期間が⻑い⻑期債と、償還までの期間が短い短期債で比べたとき、⻑期債の方が ハイリスク・ハイリターンであるということです。

 

よって債券の優劣を比較するときには、同じ残存期間の債券を比較しなければ意味がありません。 例えば、「日産の 1 年債は1%でトヨタの 10 年債は 2%か・・・トヨタの方が利回りが高いな」と考えるのは ナンセンスです。

年限が伸びるほどハイリスクハイリターンであることを認識してください。

 

 

6.イールドカーブ

イールドカーブは日本語でいうと利回り曲線で、残存期間が異なる債券の利回りの変化をグラフにしたものです。横軸に残存期間、縦軸に債券の利回りをとります。

最も頻繁に使用されるのは国債のイールドカーブです。信用リスクがなく、広い年限をカバーしているためです。

 

イールドカーブで重要なのはその形状です。イールドカーブの形状は、将来、金利の上昇が予想されているのか低下が予想されているのかを教えてくれます。

カーブの傾きは、投資家の将来予想・・・つまり経済の見通しを示していることから、経済環境を表す良い指標と言え、多くの機関投資家が注目しています。

 

■通常のイールドカーブ

通常のイールドカーブは右肩上がりです。年限が⻑くなるほど利回りが高くなることを示しています。

このタイプのイールドカーブは、経済が成⻑する景気拡大時に見られるのが一般的です。このような環境下では、投資家はインフレと将来の金利の上昇の見返りとして、年限が⻑い債券にはそれ相応の高い利回りを要求することからこのような形状になります。

 

 

■フラットなイールドカーブ

フラットなイールドカーブは、景気が拡大から後退に向かう時期、あるいはその反対の時期にみられます。

最もよくみられる例としては、急激な経済成⻑(つまりインフレ)を抑えるため、中央銀行が金利を引き上げるときです。この場合、金利引き上げに応じて短期金利が上昇し、インフレ期待が収まっていくため、 ⻑期金利は低下します。

 

■逆イールドカーブ

時に⻑期債の利回りが短期債よりも低くなり、イールドカーブが右肩下がりとなることがあります。この形は それほど頻繁には見られませんが、金利とインフレ率がどちらも下降している景気後退時に見られることが一般的です。過去の例では、景気後退が始まる 12 ヵ月から 18 ヵ月程度前にイールドカーブが反転しています。

 

 

カーブの形状が立つことをスティープニングといい、逆に寝ることをフラットニングと呼びます。

 

 

次に直近の日本国債のイールドカーブを見ていきます。

日銀の政策により、10 年以下の国債は全てマイナス圏に沈んでしまっています。

 

 

財務省公表の国債金利情報

https://www.mof.go.jp/jgbs/reference/interest_rate/index.htm

 

米国債のイールドカーブ推移ですが、日本に比べてダイナミックに動いていることが分かると思います。様々な景気の見通しの変化により投資家は先行きの金利見通しを変化させ、それが利回りの変化を生んでいます。

 

 

なお、その国の 10 年国債の利回りが一般に代表的な⻑期金利とされています。

 

 

7.格付けについて

株式に多くの銘柄があるように、債券の世界にも数多くの銘柄が存在します。債券は最終的にお金がかえってこないと意味がないため、発行体の信用力の調査が重要です。

しかし、ひとつひとつ調べていくのは非常に大変です。そこで調査を代わりに行ってくれる第三者機関が格付け会社と呼ばれる存在です。

世界ではS&P、ムーディーズ、フィッチなどが有名です。

日本ではR&I(格付投資情報センター)、JCR(日本格付研究所)が有名です。

 

国別の格付けは下記のようになります。

 

プロは基本的に BBB (トリプルビー)以上のものしか投資しません。逆に言えば BBB 以上の格付けを取得しなければ国債や社債発行は難しいということになります。(ただし高い利回りを払えば発行できる)

下記は S&P が世界で格付けしている企業の累積平均デフォルト率です。

例えば BB 格の銘柄は 5年するとデフォルト率が 7%を超えます。6年で10%を超えます。

ということは仮に BB格の銘柄に 100 万円ずつ投資をしていたとすると、10 件に 1 件はデフォルトし元本がかえってこなくなります。

クーポンを全く考慮しないと100 万円×10 銘柄=1000万円

→5 年後に 900 万円になります。

 

仮にクーポンが 5%だと仮定すると 5 万円×9 銘柄×6 年=+270 万円です。

900+270=1170 万円になります。170 万円を 6 年で割ると単利で 2.83%だと分かります。 仮に BB 格の債券が 5%だとしても、デフォルトの可能性を考えると大きくリターンは毀損します。

A 格の銘柄は 7 年で累積平均デフォルト率が 1%を超えます。100 銘柄に投資したときに 1 銘柄デフォルトします。では 1 銘柄 10 万円投資し先ほどと同じように 1000 万円投資したとします。A格のクーポンが 3%、期間は同じ 6 年と仮定します。

0.3 万円×99 銘柄×6 年=178.2 万円

1 銘柄がデフォルトしたとすると-10 万円

元本 990 万円+178.2 万円-10 万円=1158.2 万円で BB 格投資とほぼ同じになります。

格付けが悪化することによるデフォルト確率の増加と経過年数が経ることによるデフォルトの確率の増加では前者の方が圧倒的に大きいことが分かります。

よって、発行体の信用リスク、つまりクレジットリスクを取るよりも、年限のリスクつまりデュレーションリスクを取る方が効果的だと考えられます。

 

https://www.standardandpoors.com/ja_JP/delegate/getPDF?articleId=1498574&type=COMMENTS&subType=

 

 

8.クレジットスプレッド

投資の意思判断で重要なのは、イールドカーブの多重構造を理解することです。

まず 1 番下に信用リスクが最も低いとされる国債があり、その上に政保債や財投機関債、地方債などの他の公共債があり、その上に事業債の中でも格付けの高いものから順に並んでいるということです。

 

そしてこれは通貨ごとに変わってきます。円とドルでは違う構造になっています。

 

ここで問題です。

例えばトルコの A 社の社債が 12%だったとします。年限は 10 年、格付は A 格です。投資しますか?しませんか?

 

トルコの金利は 2020/1/16 時点で 11.25%です。ということはクレジットスプレッドが 0.75%です。トルコリラの中で最も信用力が高いトルコ国債で 11.25%も得られるのに、それよりもリスクもあり、しかも 10 年債なのに 0.75%しか上乗せ金利がないのであれば投資妙味に欠けるでしょう。

 

確かに日本には 12%の社債など存在しないのですが、きちんと通貨ごとのリスクフリーレート、つまり国債利回りを把握することが大切です。

なおトルコの場合、10%近いインフレの為、為替差損が発生する可能性が高く、11.25%のリターンは為替差損によって打ち消される可能性が高いです。

さらにトルコの格付けは BB-の為、投資不適格級です。

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