今回は巷に流行っている悪質な投資商品について説明します。
こういった商品はよく調べないとメリットしか入ってこない情報のため騙される人が非常に多いです。
いくつか例を上げて説明していきます。
目次
豪ドル建て元本確保型ファンド
このファンドは投資金の払い込みは豪ドルで行います。
例を上げて説明すると 100 万豪ドルを預け、 10 年間その資金を運用し、仮に損しても 10 年後には 100 万豪ドルが必ず戻ってくるというものです。
個人投資家がリスクを取って投資をしない理由である損をする可能性を抑えたこの商品は魅力的にうつるかもしれません。
元本を減らさずに運用を行うことは可能です。一般的には固定利付債がメインですが、一部割引債と呼ばれるものがあります。これはクーポンがない代わりに発行価格が安いというものです。
2014 年時点の情報ですが、オーストラリアの政府系金融機関、ビクトリア州財務公社が発行する 10 年債はクーポンが 0 の代わりに発行価格が 62万ドルでした。クーポン(年間利子)がない代わりに 62 万豪ドルでこの債券を購入すると 10 年後の償還では 100 万豪ドルになって返ってきます。
こういった元本確保型のファンドでは、投資家から 100 万豪ドルを受け取り、割引債を購入したおつりである 38 万豪ドルを株や債券などに投資して運用益の獲得を目指しているだけなのです。
38 万豪ドルを上手く運用出来れば運用益を投資家に払い戻し、仮に上手くいかなかったとしても投資家には 100 万豪ドルをそのまま返金できます。このような仕組みで元本確保と運用益の追求を両立させています。
ここまで聞くといい話に聞こえるでしょうか?
実際、いい話ではありません。この政保債は利益が 38(100-62)÷元本 62×100=61.29%のリターンが10 年間で上げられます。であれば最初からこの債券を 100 万豪ドル購入しておけば、確実に 161.29 万豪ドルまで増やせるのです。
もし元本確保型ファンドにお金を入れて 10 年後にプラスマイナスゼロでお金が戻ってきた場合、それは 61.29 万豪ドルをとり逃したと同じ意味になります。
高金利通貨を持っていて、⻑期にわたってお金が増えていないことは減っていることと同義なのです。
仕組みさえ理解出来れば自分で債券と積極運用の為の株の ETF を個別に購入すればいいのです。 その分ファンド手数料がかからないなど、最終的に利回りは高くなることでしょう。
太陽光発電
こちらも例を出して説明します。
ファンドの商品として太陽光発電に使う土地が借地の場合、20 年経つと設備を撤去して土地を返す契約になっています。
借地でなくとも、ほとんどの人は 20 年前に設置した旧式の太陽光パネルにメンテナンス費用を払いながら使い続けることは経済的合理性がないため、廃棄するという想定で考えています。
例えば初期コストが 1 億円だとします。利回りが 10%です。
1 年目には 1000 万円、2 年目に 1000 万円のリターンがあげられることになります。
しかし債券では 20 年後元本が帰ってきますが、太陽光発電では返ってきません。20 年間のリターンの 合計は 2 億円です。しかし初期コスト 1 億円は返ってこないため、実際の最終利回りは 10%ではなく 単利で 5%になってしまいます。
これは 10%という高いクーポンを払われますが、最後の最後で会社が破綻し、元本が返ってこない債券と同じです。
この場合、流動性が低く手間もかかる太陽光発電よりも一般的な債券 ETF の方が良いでしょう。
カンボジア(新興国)の米ドル建て銀行預金
カンボジアでは現地通貨だけでなく米ドルが流通しています。このため、現地通貨の為替リスクをとらず、高い利回りが得られることで注目を集めています。
カンボジアではおおよそ 5%程度の定期預金が存在しています(2019 年時点)。日本では、定期預金は 0% です。そして本来のドルの金利は 2%程度となっています。
日本の定期預金よりも圧倒的に高く、さらに通常のドル金利よりも高いカンボジアの定期預金は高金利で魅力的に見えるかもしれません。
では高金利の源泉はなんでしょう? 高金利である理由があるはずです。
この高金利の源泉は、カンボジア国家に今後何が起こるか分からないという「カントリーリスク」と、カンボジアの銀行が潰れるかもしれないという「クレジットリスク」の双方をとっていることです。
2019 年 10 月時点でのカンボジアの格付けはムーディーズによると B2 と投資不適格級となっています。
定期預金と聞くと安定していて低リスクの投資商品という認識があるかもしれませんが、実際は投資不適格級の国家の中にある現地銀行が発行する高リスクで安定しない債券を購入していることと同じです。
以上がこの商品に投資することをおすすめしない理由です。
代替案として提案するのであれば、カンボジアよりも高い格付の国が含まれている新興国国債 ETF、少し目線を下げて投資適格級社債 ETF、同じ不適格級でも銘柄が分散され、いつでも現金化できる投資不適格級社債 ETF の方がいいでしょう。
オフショア積立保険
そもそもオフショア積立保険とはどんなものでしょう。
簡単に説明すると、ファンドを販売する保険会社はヨーロッパや香港などに籍を置く大企業です。ファンドの販売は、香港やシンガポールなどの IFA (Independent Financial Advisor)と呼ばれる代理店に委託されており、日本国内で営業している人達は、代理店の代理・・・つまり下請けです。
このように集められた資金は、IFA の判断により、保険会社の用意した数多くのファンドの中から、いくつかを選び、運用ポートフォリオを組みます。
これが「専門家に運用を任せておけば大丈夫」と説明される理由です。
逆に言えば、お金を預けるIFA によって結果は全く異なってきます。
なお、投資出来るファンドは特別なものではなく、誰でも購入することが出来る ETF がほとんどです。
つまりインデックスファンドへ分散投資するために、海外の IFA に運用を委託するのがオフショア積立ファンドの中身です。
「世界中の優秀なファンドを集めて・・・」と説明されることもあるようですが、保険会社によっては 200 種類ほどのファンドを選べるところもあるので、高い利回りをあげるファンドが含まれていないほうがおかしいのです。
この商品の説明を受ける際は「25 年間毎年 6%、複利運用出来れば・・・」と根拠のない収益見通しを営業員に説明されます。
しかし、当然株式市場が下がればファンドの収支はマイナスになります。
これらの積立商品は 25 年間、毎月 500 ドルを積み立てていくことが一般的です。最初の 24ヶ月で積み立てた資金は「初期ユニット」と呼ばれ、積立を始めて 24ヶ月以内に解約すると、その全額を没収されてしまいます。恐ろしい商品です。
さらに初期ユニットに対しては毎年 4〜8%もの手数料がかかり、その取り分は保険会社、IFA、日本人 ブローカーの 3 者で分け合っています。日本人ブローカーの報酬は 1 契約あたり 40 万円程度と言われています。
「初期ユニットに対する手数料は高いですが、それ以降の管理費は 1%程度なのでお得です」と説明されることもあるようですが、個別のファンドも手数料がかかるので二重に手数料がかかってしまいます。
そもそも自分で ETF を購入して運用すればいいだけなので、このように非常に高い費用を払う必要性はありません。
オフショア積立保険は、本来は無料で購入できるファンドに対して「自ら解約ペナルティをつけ、自ら高額な手数料を払い、積立を行っていること」となんら変わりありません。
ここまでの話でも問題がありましたが、さらに問題があります。 海外保険の掛け金は日本の税法上、控除対象外になってしまっていることです。さらに相続時の手続きが不明瞭、複雑、時間がかかること。満期時の課税方法はまだ規定されていないため、最悪の場合、雑収入として本業給与と合わせて高額な税率を課せられてしまう可能性があります。これは住⺠税と合わせて最大 55%です。
最後に
投資をしてはいけない商品を最後にまとめます。
・豪ドル建て元本確保型ファンド
・太陽光発電
・カンボジアの米ドル建て銀行預金
・オフショア積立保険
以上のようなものはおすすめできない投資商品になります。
自分の大事な資産を守るためにも、うまい話には騙されないように金融リテラシーを高め、資産形成をしていきましょう。